帰省して思うこと
今年も田舎に帰省しました。帰省のお供として、「里山資本主義」を鞄に入れていきました。
里山資本主義は、一言でいえば、里山にある資源を有効に活用することによって、外部資源(生活圏の外の資源)に過度に依存している現状を少しでも改善しようという理念と読みました。林業、農業(菜園)に加えて、人(主として老人)の有効活用の事例紹介は興味深いものがあります。特に、標準品からの脱却と、人と手間をかけることの重要性、つまりは標準的な流通システムからの脱却と地域雇用創出の仕組みは、「なるほど」といった感じです。
この本を手に取ったとき、以前に紹介した「神山プロジェクト」との関連性に興味を持ちました。業態は異なるとは思いますが、その地域を活性化する、つまり雇用を創造するにはどうしたら良いのか、その課題提起は同じだろうと思うからです。
里山資本主義を読んでいると、神山プロジェクトとの同一点として、特定の個人の存在が重要であることが分かってきました。神山プロジェクトではグリーンバレーの大南さんがキーパーソンとして登場します。そして、里山資本主義では、真庭の中島さんが登場します。個々の事例に目が行きがちですが、これらのキーパーソンに注目して全体を俯瞰しなおしてみると、別の見方ができそうな気がします。
先日、「急に売れ始めるにはワケがある」を紹介しました。そこで繰り返し登場するキーワードにメイヴン(Maven)とコネクターがあります。
メイヴン(Maven)とは「知識を蓄えた人」という意味の単語で、この本では市場通と訳されます。他人の問題を解決することによって自分の問題(自分の感情的必要性)を解決している人で、口コミによる伝染を始動させるための知識と社交的技術が備わっています。コネクターとは、口コミを伝染させる人で、とにかく意味があると思う情報をたくさんの人に伝えたがっています。この両者の組み合わせにより、急激な社会的変化が生じるというわけです。
これを神山プロジェクトや里山資本主義に照らし合わせてみると、メイヴンは先に上げた方々であり、コネクタは前者であれば日経BPの篠原さん、後者はNHK広島取材班や藻谷さん、つまり、これらの本の著者となるのでしょうが、それ以前にローカルな現場には、他の多数のメイヴンやコネクタの存在があることはこれらの本を読めばわかります。
そもそも、なぜ帰省の鞄の中に里山資本主義を入れたかというと、自分の故郷を今一度見直してみたいと思ったからです。急速に高齢化と過疎化が進む現実があり、更に自分自身もそろそろ定年後のセカンドライフを考える時期が近くなり、田舎の家や墓の管理を考えないといけない時期にも迫ってくる中で、よそにはなんだか元気な田舎があるらしいと。その事例越しに自分の田舎を見てみるのはどうだろうと。
これを書いている時点の結論としては、メイヴンが居るか居ないか、それがキーのようです。私の田舎に限った話ではないかと思いますが、一般に地方自治体への依存というか過度の期待が大きいような印象を受けてます。
メイヴンになるには、恐らく金銭的な資本(里山資本ではなく)が必要だと思います。実際、これらの本に登場するメイヴンは本業があります。これは、例えば「ナリワイをつくる」に紹介されてるような生業ではありません。見方を変えれば、だれかのナリワイを成立させるたには、それを支える本業運営者(経済の仕組みを持つ人)が必要なのかもしれません。たとえば、ナリワイで行っている家庭菜園の野菜を食材として購入する介護施設経営者の存在など、です。メイヴンは、ある意味奇特な人なのかもしれませんが、そういった人物は恐らくとても限られており、そういう人物がいる田舎が変化することが可能なのかもしれません。
となると、私がいくら考えてもだめで、そういった人物の降臨を待つのみといったところに落ち着いてしまいそうです。
このテーマは長くなりそうです。。。。