先日設置したワイヤーダイポール(DIAMOND W8010)とv字ダイポール(Comet CHV-5α)について、雨によってSWRが大きく変化した顛末記。

結論から先に書くと、両方のアンテナとも全てのバンドにて共振周波数が低い方にシフトし、その結果運用周波数でのSWRが悪化していた。原因はアンテナの水滴。これを取り除く(振り落とす)と共振周波数は元に戻った。ネットで提供されている情報から、アンテナの水滴がアンテナエレメントの地面に対する静電容量を大きくし、それにより共振周波数を低くするようだ。アンテナの等価回路は直列LCR回路であり、そのfo = 1/(2π√LC)なので、Cが大きくなるとfoは低くなるということだ。表1と2にそれぞれのアンテナの設置後、雨の後(アンテナに水滴が付いている状態)、水滴除去後の共振周波数をまとめた。
表1 : DIAMOND W8010の3.5/7/21MHzワイヤーダイポールの共振周波数変化
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設置後 |
雨の後 |
水滴除去後 |
80M |
3.558 |
3.502 |
3.544 |
40M |
7.109 |
7.000 |
7.084 |
15M |
21.080 |
20.780 |
21.000 |
表2 : Comet CHV-5αの共振周波数の変化
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設置後 |
雨の後 |
水滴除去後 |
40M |
7.090 |
6.994 |
7.078 |
20M |
14.054 |
13.996 |
14.040 |
15M |
21.089 |
20.740 |
21.060 |
10M |
29.260 |
28.760 |
29.180 |
6M |
50.870 |
50.200 |
50.700 |
写真1 : W8010の雨の後の状態

写真2 : W8010の水滴を除去した(水滴を振り落とした)状態

CHV-5αはアンテナマストを叩いてエレメントに付いていた水滴を落とした。雨の後のfo測定と水滴除去後のfo測定の間に行ったことはエレメントの水滴除去だけなので、エレメントについていた水滴がfo低下の原因と考えることができる。
CHV-5αは短縮率の大きさから、SWR変化が周波数に対して急峻で、このfoのシフトは運用上致命的だった。
写真3 : 雨降り中のSWR値

7MHzや21MHzでは運用が出来ない状態になった。
写真4 : 雨が上がった後のSWR値

雨が上がっても運用の観点からは状況は改善しなかった。
写真5 : 水滴を除去した後

設置後の状態にほぼ戻り、運用が可能となった。
例としてW8010の3.5MHzのfo測定結果の変化は写真6から8の通りとなった。
写真6 : 設置後のfo

写真7 : 雨上がり後(エレメントに水滴が付いている状態)のfo

写真8 : 水滴を除去した後のfo

以上より、エレメントの水滴がfoを低い方にシフトさせ運用に影響を与えることが判明したので、以降は雨上がりにはエレメントの水滴を落としてから運用するようにしたいと思う。
追記1
今回水滴の影響がSWRに顕著に出ている。一つの理由としてアンテナワイヤーの地上高に低さがあると思う。
静電容量は以下の式で求められる。
C = ε・S / d S:電極の面積、d:電極間距離
電極間距離dが小さい程静電容量は大きくなる。そこに水滴が加わって、仮に静電容量が1.5倍になったとするともともとの静電量量が大きいのでその変化量も大きくなるということだろうと思う。であれば、地上高が倍高ければ、水滴によるfoシフト量は半分になるのかもしれない。
追記2
ワイヤーダイポールの地上高を上げた。これによる水滴SWR変化を確認してみた。というのも、水滴によるアンテナワイヤーと大地間の静電容量が影響しているのなら、アンテナ地上高を上げることで静電容量が小さくなるはずで、共振周波数変化量も少なると思うから。
雨降り中のSWR特性。共振周波数は3.522MHz。

ワイヤの水滴が無い状態。共振周波数は3.565MHz。

共振周波数変動幅は3.565-3.522=0.043KHz。
アンテナ地上高を上げる前は3.544-3.502=0.042KHz。
以上より地上高を2メートル位上げた位じゃ水滴による静電容量変化は全く変化なしということ。